社内共通認識で取り組む採用基準の決め方とは

意外とありがちな人事、現場、役員間での採用基準の相違。

どんな人を採用しよう、こんな人は不採用としよう。
人事と配属予定の責任者や役員間で、ありがちな要件の不一致をなくすための記事です。


採用基準とは、人材を採用で合否を判断するための基準のことです。
採用基準を設定することで、採用ミスマッチを防ぎ、どの面接官が選考を行っても差が出にくくする効果が期待できます。
もし、採用活動がうまくいっていない場合は、採用基準に問題があるのかもしれません。
そこで今回は、問題のある採用基準や、採用基準の作り方、注意点について解説します。

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目 次

    問題のある採用基準とは

    明確な採用基準がない

    明確な採用基準がないまま、面接担当者に合否の判断で選考を進めると、面接官によって合否結果に個人差が出てしまいます。
    「なんとなくいい人そうだから。」という感覚的な採用を行うと、自社が本当は必要としていなかった人材を採用してしまったり、自社で活躍できる人材を不採用にしまったりと、採用のミスマッチが起こる可能性があります。

     

    採用基準が高すぎる

    労働者人口の減少により、どこの企業も採用が難しくなっています
    転職市場を考慮せず、同業他社・同職種以上の採用基準にしてしまうと、採用候補者数が減少していまいます。
    採用基準が高くなっていることで、自社で活躍できる素質のある人材が不採用となり、適切な採用が行えません。
    どの企業もいい人材であればあるほどよいですが、売り手市場の現状を考えると、現実的かつ自社にとっても適切な採用基準を設けることが大切です。

     

    現場と人事の合否の感覚が一致していない

    人材を採用するのは人事であり、その人材とともに仕事をするのは現場です。
    人事担当者は、現場の声に常に耳を傾ける必要があります。
    人事がいいと思う人材が、実は現場にとっては必要なかったり、現場がほしいと思う人材が、不採用となってしまう原因は、採用基準に相違があるからです。
    双方でどんな人材が必要か?について、その時々で意見交換をしつつ再検討しましょう。

    採用基準の策定方法5ステップ

    ここまでで、採用基準の大切さや、問題のある採用基準についてお話させていただきましたが、では具体的にどのように採用基準を決めていけばいいのか?と疑問が出てくると思います。
    以下、順番に採用基準の作成方法について解説をしていきます。

     

    転職市場の相場を把握

    うちの会社にはこういう人材が必要だ!という願望を固める前に、競合他社の動きを調査・分析してみることが大切です。

     

    (例)
    ▼厚生労働省が発表している「一般職業紹介状況」を確認
    ▼民間の調査研究機関が発表している採用市場レポートを見る
    ▼他社求人情報をリサーチする

     

    募集したい人材を採用するには、どれほどの難易度があるのか?自社の採用基準が他社と比べて高過ぎていないか?を知ることで、適切な採用基準の大枠をつくることができます。
    有効求人倍率が高かったり、求人件数が多い職種は競争が激しいため、人材採用が難しくなります。
    他社よりも求職者にとって魅力的な労働条件(給与・待遇・勤務時間)に変更したり、採用基準レベルを下げてみるなど、適正な基準への変更が必要です。
    転職市場に合った採用基準を設定し直すことで、採用候補者の母集団を適切に絞り込むことができ、自社で必要な人材をしっかりターゲティングできます。

     

    現場意見をしっかりとヒアリング

    募集をしたい人材と関わる現場社員の声を直接聞きましょう。

     

    (例)
    ▼どんなキャラクターを持っている人材がいいのか?
    ▼業務上不可欠なスキルや経験、資格は?
    ▼年齢や性別、なじめそうな人材の素質は?

     

    人材採用を進めていく上での基準を決める際に必要な質問事項を用意し、現場社員とミーティングをしましょう。
    ただ、現場の採用基準が、転職市場とかけ離れて高くなっている可能性もあります。

    そういった事態に備えて、現状の転職者の動向を示すデータや他社求人など視覚的に分かるものを用意しておきましょう。
    現場の採用基準が高いままだと、適切な採用を進めにくいので、この場で現場社員に業務に支障が出ない程度に妥協してもらう必要があるからです。
    採用候補者の幅を増やすためにも、ここは人事の腕が試されるところです。
    現場の声と人事担当者の採用基準のすり合わせを行いましょう。

     

    コンピテンシーモデルを設定する

    人事と現場での話し合いで採用基準の確認ができたら、「コンピテンシーモデル」の作成をしていきます。
    コンペテシーとは、職務や役割において優秀な成果を発揮する行動特性(専門知識や技術、ノウハウ、基礎能力など)のことを指します。
    このコンペテシーの分析をもとに、どういった社員が仕事のパフォーマンス力が高いか?を明らかすることで、コンペテシーモデル(自社が求める人材のモデル)を作成し、よりよい採用を進められます。

     

    コンペテシーモデルの設定順序
    [1]社内で、仕事のパフォーマンス力が高いとされる社員を選出
    ここで、目標となるモデルはどんな人材か?を定義しましょう。

    [2]コンピテンシーディクショナリーを作成する
    下記は、コンピテンシーの研究機関であるスペンサー&スペンサーが、コンピテンシーを20の項目に分類した「コンピテンシー・ディクショナリー」です。この項目をもとに、自社で必要なコンペテシー項目を洗い出してみましょう。

     

    〇コンピテンシー・ディクショナリー
    ・『達成思考』『秩序・品質・正確性への関心』『イニシアチブ』『情報収集』
    ・『対人理解』『顧客支援志向』
    ・『インパクト・影響力』『組織感覚』『関係構築』
    ・『他者育成』『指導』『チームワークと協力』『チームリーダーシップ』
    ・『分析的志向』『概念的志向』『技術的・専門職的・管理的専門性』
    ・『自己管理』『自信』『柔軟性』『組織コミットメント』

     

    例えば、営業職であれば、『達成思考』『戦略的思考』『対人理解』『ストレス耐性』が必要と考えられます。
    募集する職種によって問われる項目も違ってくると思うので、何職種が同時に募集する場合、それぞれのコンピテンシー・ディクショナリーを作成しましょう。

     

    [3]作成したコンペテシー項目を、具体的に文章にする
    コンピテンシー・ディクショナリーをもとに、行動を具体化していきます。
    例えば、『ストレス耐性→変化を好む。過去に困難を乗り越えた経験がある』『達成志向→これまでに趣味や勉強など、継続してきたことがある』などです。
    項目から、どんな人物であるか?どんな人物だとよいか?を文章にしていきます。

    このように具体的化していくと、コンペテシーモデルを明らかになり、かつそれを把握するための質問内容も必然的に決まってきます。コンペテシーモデルの作成によって採用基準作成の基盤が整います。

     

    採用基準を書き出し、優先順位を決める

    採用基準が分かってきたところで、その項目に優先順位をつけていきましょう。
    これがないと他の条件が揃っていても不採用にするのか?この条件があったら理想的など、その項目がどれだけ採用基準として優先度が高いのかを明らかにしていきます。

    これを行う理由は、採用条件が過度に厳しくなることを回避するためです。
    また、採用候補者の中で、どの人材を採用するべきかの判断材料とするためでもあります。

     

    各選考フローに採用基準を設定する

    人材採用には、書類選考、筆記試験、一次~最終面接まで、採用決定の段階があるかと思います。
    それぞれの段階でどの採用基準を適用するかを決定していきましょう。
    採用基準の設定方法は、各選考段階によって採用判断軸を分ける方法(書類選考では経験、一次面接では人物像など)や、選考が進むにつれて採用基準レベルをあげていくような方法など、自社が選考を進めやすい基準で構いません。

    採用基準を設ける際の注意点

    法律上、採用基準にしてはいけない項目や配慮が求められる表現があります。
    下記項目が含まれていないか?を最後に確認しましょう。

    禁止項目
    ・性別
    ・年齢
    ・身長、体重、体力
    ・障害・病気の有無
    ・転居を伴う転勤に応じるか

     

    以下、本人に責任のない事項や、本来自由であるべき事項についても、採用基準としてはいけないとされています。
    ・本籍・出身地
    ・家族
    ・住宅状況
    ・生活環境・家庭環境
    ・宗教
    ・支持政党
    ・人生観・生活信条
    ・尊敬する人物
    ・思想
    ・労働組合(加入状況や活動歴など)、学生運動などの社会運動

     

    こうしたことを抑えた上で、自社に合った基準要件を設計していきましょう。

    さいごに

    いかがでしたでしょうか?
    今回は、問題のある採用基準、採用基準の作り方、注意点に解説しました。
    採用基準は、自社のよりよい採用を進めるために大切な部分です。
    採用基準の作成は、社内の協力、人事担当者の時間と手間が必要になります。
    しかし、しっかりと作成をした採用基準による人材採用を行うことで、離職率が低下で再度採用活動をする手間がな減ったり、新たな人材を採用する際の判断時間が短縮されるなど、結果的に採用の効率化につながることも期待できます。

    上記を参考に、自社独自の採用基準を作成して、採用の質を向上していきましょう。


    採用ペルソナの設計や、採用を予定する人材へのアプローチでお困りのご担当者様は、こちらのフォームからお気軽に当社へご相談いただければと思います。

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